管理栄養学部

研究室の紹介食品学研究室Ⅰ

管理栄養士の視点で食物アレルギーを攻略する

現代社会において「食物アレルギー」は重要な健康課題の一つです。食物アレルギーの研究は、農学や工学といった基礎分野と医学の臨床分野から、日進月歩で行われています。本研究室は、実験を行う基礎分野の研究にあたりますが、時には病院と共同研究体制をとり、アレルギー患者さんの血清を使用しアレルゲンを解析しています。何より、学生は「管理栄養士の卵」なので、食品中のアレルゲンをただ解析するのではなく、調理・加工したらアレルゲンがどのような状態になるのか、アレルゲン性はどのように変化するのか、という視点で食物アレルギーを研究しています。

研究テーマ

カゼインホスホペプチドのアレルゲン性に及ぼすリン酸基の影響

牛乳カゼインの分解産物であるカゼインホスホペプチド(CPP)により、アレルギー症状が誘発される症例があります。しかし、これまでにIgE結合部位(エピトープ)は見出されてきませんでした。この原因として、CPPはリン酸化されたセリン残基を多く含みますが、これまでのエピトープ解析はリン酸化されていないセリン残基を用いたためだと考えました。そこで、CPPに対するIgE結合能におけるリン酸基の影響を明らかにすることを目的に研究しています。本研究の成果は、加工食品における脱リン酸化によるアレルゲン性の変化を示す新しい所見となり、アレルギー患者の食品選択に大いに寄与できると考えています。

卵白タンパク質の性状変化がアレルゲン性に及ぼす影響

ベイクドエッグ(クッキーやマフィンなど)であれば、鶏卵アレルギー患者が症状誘発閾値以上の量を摂取できると報告されています。しかし、ベイクドエッグでも小麦粉や米粉、片栗粉など使用する副食材によって摂取可能量が異なり、その違いは卵白タンパク質の溶解性に起因しているのではないかと考えました。そこで、卵白の主要アレルゲンであるオボムコイドとオボアルブミンに着目し、これらの溶解性の変化がアレルゲン性に与える影響を明らかにすることを目的に研究しています。本研究室では、溶解性が低下することで消化・吸収性が低下すると考えています。そのため、溶解性の異なるオボムコイドやオボアルブミンを作製し、その消化動態や吸収性を解析しています。

うずら卵白のアレルゲン性の解析

うずら卵白と鶏卵白のタンパク質の相同性(アミノ酸配列)は70~80%あります。一方で、実際に鶏卵アレルギー患者がうずら卵をどの程度摂取できるのか(臨床的交差反応)は明らかではありません。そこで、うずら卵白と鶏卵白中の主要アレルゲンを分離精製し、その交差抗原性を明らかにすることを目的として研究しています。
また、うずら卵は「生」で喫食することもあれば、水煮(茹で)の状態で購入することもあります。うずら卵は鶏卵よりも小さく、熱が容易に伝わることが想像できます。さらに、市販されている水煮(茹で)うずら卵は、加熱の工程以外にも様々な加工工程が行われています。したがって、市販の水煮(茹で)うずら卵中のアレルゲンの状態は、鶏卵のゆで卵と異なる可能性があります。本研究は、天狗缶詰(株)と共同で水煮(茹で)うずら卵のアレルゲン性を研究しています。

教員の紹介

和泉秀彦 教授

担当科目/管理栄養士特論、食品学I、食品学II、食物とアレルギー

博士(農学) 専門:食品学・食品機能学・食物アレルギー
大学・大学院で食物アレルギーの世界に飛び込み、それ以来30年食物アレルギーに関するの研究をしています。食品(食物)の面から食物アレルギーの患者さんに有益な情報を提供するために、日々学生さん達と新しい知見の発掘を目指して研究しています。また、社会活動においても認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク理事として、食物アレルギー対応に貢献したいと考えています。