栄養が健康や病気に与える影響を科学的に明らかにする
本研究室では、不適切な栄養摂取が健康や病気にどのような影響を与えるかについて、食事調査の結果を基に、身体計測値、血液検査値、画像診断(CT、エコー検査)、心理テスト(ストレスチェック)、食行動をはじめとする生活習慣アンケートの結果から、不適切な栄養摂取が心身にどのような影響を与えるのかについて研究しています。
研究テーマ
職域健診における肥満者の栄養摂取状況の検討
健診センターの受診者のうち食事調査に協力していただいた方について、健診データと栄養摂取状況について検討させていただいています。特に、肥満やメタボリックシンドロームの発症・進展に栄養摂取状況がどのように関係しているかについて研究しています。具体的には、内臓脂肪型肥満が改善した者では、食事内容にどのような改善がみられたかを明らかにするとともに、血糖値、血圧、血中コレステロール値など生活習慣病に関係する検査値がどの程度改善できたかについても検討しています。
若年女性のやせ願望と栄養摂取状況の検討
近年、若い女性はやせている方が美しく見られるとの考え方から「やせ願望」が強く、過剰なダイエットを行う者が増えているとされています。 実際に、わが国において若年女性の低体重者(BMI<18.5)の頻度は20%で推移していますが、若年女性の過度のやせや過剰なダイエット行動は、貧血、骨量低下、ビタミン・微量元素不足の原因であるとともに、低体重妊婦からは低体重児出産のリスクが高くなり、児の将来の生活習慣病の発症に影響を与える可能性についても報告されています。また、身体への影響のみならず、過度のダイエット行動は拒食症に結びつく可能性があります。一方、心理的ストレスは過食行動に結びつきやすく、摂食障害のリスクが問題になります。本学の管理栄養学部では1年生と4年生に対して、身体計測、血液検査、食事調査、食行動についてのアンケート調査、ストレスチェックなどを実施して、健康状態、メンタルの状況を把握するとともに、不適切なダイエット行動を行っていないか、チェックしています。また、過剰な「やせ願望」の原因の1つとして「ボディイメージ」認識のずれが影響していることが明らかになり、今後この点についての対策について検討していく予定です。
病気を持つ人の生活の質(QOL)と栄養摂取状況の検討
炎症性腸疾患や慢性膵炎などの難病は、腹痛や下痢などの症状とともに食事制限が必要となるため日常生活に様々な制限が必要になります。過剰な食事制限は患者さんの栄養状態を悪化させるのみならず、心理社会的なストレス要因となり、QOLを低下させます。難病患者の栄養摂取状況を把握し、病態に応じた栄養ケアについて研究しています。
教員の紹介
北川元二 教授
担当科目/疾病の成り立ちⅠ(生活習慣病)、疾病の成り立ちⅡ(臓器・器官別疾患)、実践臨床医学
医師、博士(医学)
専門分野:胆道学、膵臓学、集団検診、集団検診、エネルギー・糖質代謝異常、メタボリックシンドローム、臨床検査医学