管理栄養学部

研究室の紹介臨床栄養学研究室Ⅰ

中高年の疾病予防と傷病者の栄養管理に役立つ実践研究を行っています。

卒論生(ゼミ生)、大学院生、病院管理栄養士の社会人大学院生がいつも賑やかにディスカッションしています(騒いでいます)。また、やまびこ認定栄養・ケア・ステーション(東名古屋医師会)や行政機関(市)と共同研究や事業を行っていますので、来客が多い研究室です。
新型コロナウイルスが流行する前は、楽しいランチミーティングを毎日開催して「共食」を実践していました。卒論生たちは、研究室のモットーである『やるときは最後まできっちりやる!』をしっかり守って、自分のペースで自由にがんばっています。

研究テーマ

1.在宅高齢者の栄養管理モデル(在宅NST)の構築に関する研究

我が国の急激な高齢者人口の増加に対して「地域包括ケアシステム」が勧められていますが、その中で「食」の管理については具体的に示されていません。そのために、毎日の食事の管理において、介護者の時間的な制約、食事内容、調理技術、食材の準備、摂取状況の評価、栄養状態の評価など多くの課題があります。これらを解決する「食・栄養」を軸として管理栄養士が行う地域ケア(栄養管理モデル)を構築する必要があり、そのための実態調査と配食サービスの開発を行っています。

 研究1 配食サービスを利用している在宅高齢者の栄養摂取量調査

近年、在宅高齢者を対象にした配食サービスを行う業者が増加し、食事を作ることが困難な在宅高齢者にはこれらを利用することが勧められています。しかしながら、利用者のニーズに合った食事でないことが多く、全量摂取できていない場合があります。また、一つの弁当を2食に分けて摂取したり、誤嚥するために残してしまう場合もあります。 一方、重度要介護の在宅高齢者の多くが必要栄養量を満たすことができず、低栄養状態であることは報告されていますが、要支援あるいは軽度要介護の在宅高齢者の栄養状態の報告はほとんどありません。
そこで、配食サービスを利用している要支援あるいは軽度要介護の在宅高齢者の栄養摂取量と栄養状態に関する調査を行っています。現在は、やまびこ認定栄養ケアステーションの管理栄養士さんと共に、日進市配食サービス助成金受給者の宅を訪問して、栄養摂取量調査を行っています。

 研究2 地域高齢者に対する健康支援型配食サービスの体制づくり

地域包括ケアシステムの中では、医療・介護関連施設と高齢者が生活する在宅をつなぐ食支援が必要とされています。その支援を鑑み、配食事業が栄養管理や低栄養・フレイル予防に参画することが必要と考えられています。
そこで、高齢者の健康寿命の延伸を目的に、配食事業者と連携して栄養教育を行なう健康教室を開催して、「健康支援型配食サービス事業」を市と共同で行っています。具体的には、地元配食事業者と共同で、『地域高齢者健康講座(サロン)』で食べていただく教育的弁当を開発しています。これらの活動を評価することで、連携できる事業者を抽出・教育し、市の事業として持続的に実施できる体制に繋げていくことを目指しています。

2.随時尿中ナトリウム濃度と食塩摂取量に関する研究

管理栄養士は多くの患者様に食塩制限の栄養食事指導を行わなければなりません。しかしながら、患者の食塩摂取量を評価するための簡便な方法は確立されておらず、食塩摂取量の正確な把握はできていません。また、患者様の食塩制限に対するアドヒアランス(患者様が積極的に治療に取り組むこと)を向上させるためには、患者様自身が食塩摂取量を把握することが不可欠です。このような背景から、随時尿中ナトリウム濃度から食塩摂取量を推測できる装置の開発を始めました。卒業研究では、これらの基礎的なデータを蓄積するために、随時尿中ナトリウム濃度を中心とした生体指標成分と食塩摂取量の関連について検討しています。
 具体的には、正確に塩分を調整した食事を準備・調理して一定期間摂取し、その期間の随時尿中の生体指標成分を測定します。卒論生と大学院生が研究者兼被験者となって、実験期間中の食事準備、食事摂取、採尿をすべて行っています。

教員の紹介

塚原丘美 教授

担当科目/臨床栄養学Ⅰ、臨床栄養学実習Ⅱ、栄養ケアプロセス演習

病院栄養士としての勤務経験を活かして、学生にできるだけ具体的に管理栄養士の業務内容と大切なことを伝えています。
しかし、現場から離れてかなりの年数が経ち、今では病院で管理栄養士として働く卒業生から現場の様子や最新の栄養管理を教えてもらいながら、卒業生と一緒に臨床研究を進めています。
また、地域高齢者に対する栄養管理を充実させるために、栄養ケア・ステーションの周知を目指して地域活動管理栄養士の方と一緒に調査研究を進めています。