管理栄養学部

なるほど豆知識栄養・食教育の重要性と共に、教材としての絵本に世界が注目しています

 英国の医学雑誌 The Lancet には、細分化されたFamilyがあります。その1つに Child & Adolescent Health という、子どもに特化したものがあります。

 2021年12月7日のThe Lancet Child & Adolescent Health の Reflections に, Kelly SwainによるBook Planting seeds: reading about gardening to learn about nutrition という記事(2ページ分)がありました。

 記事の冒頭では、世界的に5歳未満の子どもにおいて、1億4,900万人が発育阻害、4,900万人が消耗症、4千万人が太りすぎであると述べています。これらの背景には、不公正な食料システムが考えられます。また、地球温暖化を抑制するためには、食事のあり方を含めた食料システムの転換が必要であると言われています。

 さらに記事は続きます。子どもたちの栄養状態を良好にするためには、子どものころからの栄養・食教育が重要であるとし、その教材として絵本に注目しています。そして、北半球(主に先進国)で読まれている5冊の絵本を紹介しています。5冊すべて野菜を題材にしていますが、どれも単なる「野菜は身体にとってよい食べ物だから食べましょう」というメッセージではありません。自分たちが食べている物を育てることから、忍耐力と生産者への感謝の気持ち、生物と人間の多様性、地球と生物や人間の営み、食料システムについて考え、食を通じて「自分たちの健康は、人間も含む様々な生物に依存している」ことに気づいてほしい、それを踏まえ自分たちの食事はどうあるべきか考えましょう、ということだと読み取りました。

 この記事を読み、とてもうれしい気持ちになりました。

 先ずうれしかったことは、栄養・食教育の重要性が述べられていることです。12月7日は東京栄養サミット2021の開催日と重なっています。また、その1週間前に、Lancetは子どもの栄養に関するWebinarを開催していました。世界が「栄養・食教育」に注目しているとひしひしと感じます。栄養や食料問題を解決するための行動を起こしていかなくてはいけないということだと思います。

 次にうれしかったことは、医学雑誌の中で教材として絵本について論じられていることです。「教材」が取り上げられることも驚きですが、何より次世代の担い手として、幼い子どもたちを重要な存在として認め、「絵本」の有効性に注目してることは、絵本を含めた教材開発に携わる研究者として感慨深いです。

 学習者の無限の可能性を信じ、最大限その可能性を広げられるような栄養・食教育教材を作っていきたいと思いました。

 

食生態学研究室 安達内美子