管理栄養学部

なるほど豆知識タンパク質の変性と消化

タンパク質は、アミノ酸がペプチド結合で鎖のようにつながったポリペプチド鎖からできていますが、通常、この鎖が複雑に折りたたまれて立体的な高次構造をとることで、それぞれのタンパク質に特有の機能を果たしています。タンパク質が熱や酸・アルカリにさらされると、この高次構造が破壊され、タンパク質の機能が失われますが、これをタンパク質の変性と呼びます。

さて、ここで質問です。生たまごと半熟たまごでは、どちらが消化されやすいかご存知でしょうか? 正解は、半熟たまごです。一般に変性させたタンパク質(加熱して変性した半熟たまごのタンパク質)の方が消化されやすいです。これは、消化酵素(タンパク質分解酵素)がタンパク質にはたらく時に、タンパク質が変性してポリペプチド鎖がほどけていると消化酵素による切断を受けやすいからです。

口から摂取した食物中のタンパク質の消化は、胃から始まります。胃から分泌される胃酸は強い酸で、食物を殺菌する作用や、タンパク質を分解する酵素であるペプシノーゲンを活性のあるペプシンに変えるはたらきを持っていますが、これらに加えて、タンパク質は胃酸によって変性するので、ペプシンによって消化されやすくなります。

人類が急激に進化した原因は、火を使用して加熱調理をはじめたことであるとする説もあります。加熱調理することにより、食物の保存性が向上し、軟らかくなることで摂取しやすくなる(食事時間も短縮する)とともに、タンパク質や炭水化物などの栄養素を効率的に吸収できるようになりました。その説によると、これが、人類の脳が他の霊長類と違った発達をとげた原因のひとつであるそうです。

管理栄養学部2年前期に開講する生化学実験では、このようなタンパク質の変性と消化酵素のはたらきの関係を調べる実験も行っています。

分子医学研究室 井澤一郎