管理栄養学部

なるほど豆知識サルコペニアって何?

テレビのバラエティー番組や新聞などで、サルコペニアという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

1989年にRosenbergという人が、加齢にともなう筋肉量の低下を意味する言葉として、サルコペニアという新しい言葉を作りました。その後、サルコペニアという言葉は筋肉量の低下を意味するだけでなく、加齢にともなう筋力の低下加齢にともなう身体機能の低下も表すようになりました。

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ヨーロッパのワーキンググループEWGSOPによる、サルコペニアの診断基準

 

しかし、わが国ではまだ、統一されたサルコペニアの基準・診断法がありません。

そこで、名古屋学芸大学の下方らは、サルコペニアの簡易基準案(判定法)を提案しています。

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この判定法は、身長、体重、握力計、巻尺、ストップウォッチさえあれば、誰でも簡単に実施できます。

高齢になると、ふらついたり、転倒して骨折したりすることが、若い時に比べて多くなります。

これには、サルコペニアが大きく影響していると考えられています。そしてサルコペニアは、高齢者のロコモティブシンドローム(日本整形外科学会が提唱している、運動器障害によって移動機能が低下した状態)や、フレイル(日本老年医学会が提唱している、老化に伴って体が脆弱となった状態)を引き起こす要因とも考えられています。

慣れない言葉がたくさん出てきて、わかりにくいかもしれませんね。簡単に言うと、年をとると筋肉が弱りますが、そのことが、歩くことをはじめとする日常の活動にいろいろな問題を引き起こします。場合によっては、自立して生活することができなくなってしまいます(要介護)。

最近、サルコペニア(筋肉が減る)と肥満(脂肪が多くなる)をあわせもつ状態であるサルコペニア肥満が、健康に悪影響を及ぼしていることもわかってきています。

サルコペニア肥満の人は高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病になる危険性がメタボリックシンドロームの人よりも高い、とも報告されています。もともと、サルコペニアは高齢の方に使われる言葉でしたが、サルコペニア肥満という言葉は中年、若年の方にも使われるようになってます。

多くの人が、健康に長生きしたい(健康寿命を延ばしたい)と願っています。

高齢になってもいつまでも自立して生活ができるようにするためには、サルコペニアを早期に発見して、適切な処置を行っていくことが大切です。

次回のこのコーナーでは、サルコペニアに対してどのような栄養療法や運動療法が勧められているか、などについてお話しします。

分子医学研究室 井澤一郎