管理栄養学部

なるほど豆知識食品中の水の不思議:結合水

食品中には性状の異なる2つの水が存在しているのをご存知でしょうか?1つは食品中で自由に運動、移動できる、普通の水と同じ性状を持った水で、自由水と呼ばれます。もう1つはたんぱく質などの食品成分と結合しているために、自由に運動、移動することができない水で、結合水と呼ばれます。食品中では、図のように食品成分(たんぱく質)の表面に直接吸着している水分子、その外側に結合している2~3分子の水分子の層が結合水で、結合水の外側の層が自由水になります。

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なぜ結合水は自由に運動、移動することができないのでしょうか?それは、水分子が水素結合を形成するからです。水素結合とは、酸素や窒素など電気陰性度の高い原子の間に水素原子をはさんでできる分子間の結合のことで、水分子同士の水素結合は図のように表すことができます。ところが、食品中の水分子は、他の水分子と水素結合を形成するばかりでなく、食品中の成分(たんぱく質など)の持つ水酸基(‐OH)、アミノ基(‐NH2)、カルボニル基(‐C=O)などの官能基とも水素結合します。この結合が非常に強いため、食品成分に直接吸着、またはそのすぐ外側に結合した水分子は自由に運動、移動することができなくなってしまうのです。

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この結合水、自由に運動、移動することができないため、普通の水(自由水)と同じように0℃で凍結せず、100℃で蒸発しません。また、微生物に利用されにくい特徴があります。したがって、食品の保存性を高める方法として、低温を保つ、pHを下げる(酢の利用)などの他に、結合水を増やすというのも効果的です。

では結合水を増やすにはどうしたらいいでしょうか?この方法を利用した食品に漬物やジャムがあります。漬物には食塩を、ジャムには砂糖を加えますね。この加えられた食塩や砂糖に食品中の自由水分が結合して、結合水に変わるのです。そうすることで微生物の増殖を抑え、保存性を高めることができます。食塩なら15%以上、砂糖なら60%以上になるように添加するとよいでしょう。しかし、現在は健康に配慮して、減塩、低糖の食品が多いので、それらの食品の腐敗には気を付けてください。

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食品学研究室II 山田千佳子