食べ物と健康
みなさんは嫌いな食べ物ありませんか? ピーマン? 「苦い、無理矢理食べさせられた」、魚? 「骨が刺さった」など。それぞれに、何かの理由や、いやな思い出があることでしょう。それに対し、子どもの偏食はどうでしょうか。あれも嫌、これも嫌、ばっかり食べなど、毎日の食事づくりを担当するお母さんは大変です。
そもそも幼児期は、食べられないものが多いものです。この時期の子どもは、咀嚼機能の発達途中にあります。咀嚼力に合わない硬いもの、大きすぎるもの、パサパサして飲み込みにくいもの、などは食べにくいだけで敬遠されます。また、子どもははじめて食べるものに警戒心が強いものです。周りの大人がおいしそうに食べるのを見て「大丈夫、おいしそう」と手が出せたりします。
子どもの偏食は、今は食べられなくても食べるようになったり、食べていた食品が嫌になったりと、固定化しないことが多いのです。嫌いだと決めつけず、調理法や味付けを変えて、繰り返し出してみましょう。
食物アレルギーのあったお子さんは、少し複雑です。卵、牛乳アレルギーのお子さんも、年齢と共にお菓子、パン、ホットケーキ、ハンバーグなら食べられるようになってきます。ところが多くの子は、卵、牛乳そのものは「まずい!」と食べてくれません。これは偏食なのか? アレルギーが治っていないのか? 私たちを悩ませます。
しかしここで、彼らのこれまでの食生活、食経験を受け止めることが重要です。生まれてから一度も卵、牛乳を食べたことがない。家庭に卵や牛乳は存在せず、外食時にも常に気をつけていた。間違って食べてしまった時の辛い症状しか記憶にない……。
彼らにとって卵や牛乳は憧れではなくて、トラウマの対象だったかもしれません。私たち管理栄養士は、そんな気持を受け止めて、支えてゆく必要があるのです。
食経験は人さまざまで、何でも自由に食べられる人ばかりではありません。食文化や宗教など、食べものに関する制限は世界中に存在します。それでも「食」とは、すべての人にとって「おいしい、楽しい」ものであり、それが「心と体の栄養」となっていることを忘れてはいけませんね。