食べ物と健康
1.災害時、食中毒リスクが高まる
地震、台風、水害などの自然災害が発生すると、ライフライン(電気、水道、ガスなど)も破壊されます。食品の冷蔵・冷凍保存ができなくなり、きれいな水も確保できなくなり、ガスでの加熱調理や加熱処理も難しくなります。微生物が原因の食中毒を予防するには、①つけない(洗浄等)、②ふやさない(冷蔵・冷凍等)、③殺菌する(加熱等)ことが重要です(3原則)。しかし、災害時にはライフラインが使えないことで、微生物性の食中毒が発生するリスクが高くなります
2.被災地への炊き出し支援で食中毒
東日本大震災の際に、支援食糧として提供された「鶏肉の煮込み料理」が原因の食中毒が発生しました。ウエルシュ菌が原因でした。ウエルシュ菌は芽胞菌(がほうきん)で、芽胞は加熱してもなくなりません。加熱調理後も芽胞がのこり、料理のなかで増殖しました。これを食べた人の腸管内で、毒素(エンテロトキシン)が産生され、69人が下痢や腹痛になりました。
3.「炊き出し衛生マニュアル」
日本家政学会は、東日本大震災生活研究プロジェクトの一環で、「炊き出し衛生マニュアル」を刊行しました。被災地での炊き出しでは、電気、水道設備がないなど、食中毒発生のリスクが高い環境で調理を行います。しかも、被災者の方々は体力、免疫力が弱っておられる方もいらっしゃいます。このマニュアルには、「衛生のきそ・きほん」と「衛生マニュアル~準備から撤収まで」の2つの内容が、イラストで分かりやすく解説してあります。被災地ボランティアで食事作りをする際に、衛生管理のポイントを押さえて安全な食事提供ができるよう、このようなマニュアルを活用していただけたらと思います。