管理栄養学部

なるほど豆知識HACCP制度化と管理栄養士

2018年6月13日、15年ぶりに食品衛生法が改正、公布されました。改正事項の中には「HACCP(はさっぷ)に沿った衛生管理の制度化」が含まれています。2年後の2020年は東京オリンピックが開催されますが、それまでに日本中の食品を取り扱うすべての事業所(レストランやスーパーでも)でHACCPに沿った衛生管理が行われるようさまざまな準備が行われていきます。

「HACCP」とはHazard Analysis Critical Control Pointのことで、日本では「危害要因重要管理点」と訳されています。もともとは1960年代にアメリカ航空宇宙局(NASA)がアポロ計画で安全な宇宙食を製造するために考案した衛生管理手法です。

HACCPに基づく衛生管理を簡単に説明すると次のようになります。食品を取り扱うすべての工程、それぞれで健康危害を引き起こすと思われるもの(危害要因:寄生虫、細菌、ウイルス、化学物質、異物など)の存在や状態がないか、を事前に検証したり危害発生を予測します。その危害要因を除去・低減させるために、加熱や洗浄や殺菌などの工程があれば、除去・低減させるための加熱温度・時間を決めたり、洗浄殺菌などを確実に行うための条件を決めます。そして、加熱や洗浄・殺菌を行う工程で決めたことをしっかり実行することで安全性を確保します。このとき実行した記録を残すことも忘れてはいけません。

管理栄養士は学校、病院、福祉施設、社員食堂などの給食施設で活躍していますが、安全な食事を提供するための衛生管理も管理栄養士の責任です。食品製造や開発、流通の分野にも管理栄養士は活躍の場を広げていますが、フードチェーン(生産か現場ら消費されるまでの食品のみちすじ)のどの場面においても「安全」は確保されなければならず、管理栄養士は「食の安全」や「HACCP」でも活躍できる人材となるはずです。

食品の安全は「HACCP」だけではなく、「一般的衛生管理(Prerequsit Programs)」も「従事者の教育訓練(Education and Training)」も重要です。この3つがすべてバランスよく実施されて食品の安全が守られるのです。

環境衛生学研究室 岸本満