化学・生物学
時々、「油もの(脂質)は太るから食べない」と言う人がいます。脂質は、体にとって必要の無いものでしょうか?いえいえ。脂質は、私達の体にとってとても大切な成分です。どんなところで必要なのか、ちょっと挙げてみます。
① 体を構成している小さな単位である細胞を囲む「細胞膜」
細胞膜は主に、グリセロールに2つの脂肪酸と1つのリン酸が結合した「リン脂質」から構成されています。成人の体には、60兆個の細胞が存在しています。その一つ一つに、脂質が必要だということです。細胞のなかには、盛んに生まれ変わっているものもあります。その時にも、たくさんの脂質が必要になります。
② 体内の環境を調整しているホルモンの一部(性ホルモンなど)、脂質の乳化(脂質の消化)を助ける胆汁酸、そして、骨の発育やカルシウムの吸収に関わるビタミンD
これらはすべて、脂質の一種の「コレステロール」から作られています。コレステロールは、肝臓でも合成されています(食事由来のものの3倍量)。つまり、体内で合成されるほど、脂質は重要な成分だということです。
③ 神経細胞で働いている脂質(スフィンゴ脂質)
スフィンゴ脂質に糖質が結合し、1個以上のシアル酸が結合したものを「ガングリオシド」といいます。それは神経細胞の細胞膜に存在し、細胞同士の認識や受容体としての役割をもちます。
このように、脂質は私達の体にとって、とても大切な成分です。脂質をまったく摂取しないと様々な問題が起こり、困ったことになります。
しかし、脂質の摂りすぎは生活習慣病などを引き起こすため、注意も必要です。適切な量の脂質がとれるよう、バランスのいい食事を心がけてもらいたいものです。