管理栄養学部

なるほど豆知識公衆衛生とはなんだろう?

「公衆衛生」の授業では、どんな事を学ぶのでしょうか?

臨床医学と比べてみると、分かりやすいと思います。

 

【臨床医学】

 病気に罹っている人がいます。病人は個人として病院を訪れ、検査を受け、診断され、投薬や外科的手術などの治療を受けます。

【公衆衛生】

 対象は健康人、病人を含めた地域社会全体の人々の集団です。もちろん、検査や身体測定などをして、診断はします。しかし、治療方法は投薬や手術ではありません。「どのようにしたら病気に罹らないのか?」といった、予防手段を考えます。また、「我々の環境はどうしたら良いのか?」について、地域の住民全員で考えます。

 

もう少し具体的に、糖尿病を例に挙げて考えてみましょう。

 
糖尿病患者は、口の渇きや体重減少を自覚して、病院に行きます。病院では、いろいろな検査をして、糖尿病の種類や重症度を調べ、薬などの処方をします。(これらは、臨床医学と言われているものです)

公衆衛生では、「その地域に糖尿病患者が何人いるのか?」「その患者の数は増えているのか? もしくは減っているのか?」を調べます。また、糖尿病と特定の生活習慣(運動不足、大食、肥満など)に関係があるのかどうかを調べます。そしてある生活習慣(運動不足など)と関係があることが分かれば対策として、住民に運動をするように衛生教育をします。(その地域に運動施設がなければ、作るような行政的な施策を検討します)

 

少し難しい表現になりますが、Simonnsは「健康は、単に個人ないしは家庭の問題としてではなく、コミュニテイの問題として把握されなければならない。」と言っています。

また、 C.E.A.Winsllowは「公衆衛生とは、共同社会の組織的な努力を通じて、疾病を予防し、生命を延長し、肉体的、精神的機能の増進を図る科学であり、技術である。」と言っています。

E.G.McGavranは「公衆衛生とは、政治統一体、即ちコミュニテイに対する科学的診断および治療である。」とも云っています。

 

栄養は、いろいろな病気(糖尿病、心臓疾患、がんなど)に、とてもよく関連している事柄です。栄養の実践は、まさに公衆衛生活動の重要な手段です。

 

山中克己

管理栄養学部